「ふたば幼稚園」は、1975年より北海道旭川市で運営している幼稚園です。子どもたちの自主性と好奇心を育むために、のびのびと屋外空間で遊べる園庭づくりに力を入れています。
屋外のすべての環境が、子どもたちの“先生”となってくれます。遊びは仲間と一緒に。学びはコミュニケーションを通じて。心は身体と頭を使って育む。子どもの成長に不可欠な要素が、ふたば幼稚園の園庭に詰まっています。
子どもが裸足で走り回れる砂を厳選したり、どんぐりやブルーベリーをはじめとする花木を30種類植栽したりするなど、2006年から園庭づくりにこだわってきたふたば幼稚園は、旭川市内でも数少ない園庭にこだわった幼稚園です。
この記事では、ふたば幼稚園の園長・山中が、園庭にこだわったきっかけと、園庭で遊ぶ子どもたちの変化について語ります。「子どもが全身全霊で遊んで学べる幼稚園があったなら……」という方は、ぜひご一読ください。
園庭づくりのきっかけ。「集中して遊びこむ環境」の大切さを子どもの表情で実感した
もともと私は野育の会に入会していましたので、当時から子どもの発育に野育がいかに重要であるかを知っていました。野育とは、自然環境でたくさん遊ぶことで、身体と心を養うという考え方です。
やがて、全国にいる野育の会のメンバーの幼稚園を訪問していくうちに、「子どもが遊びこめる園庭が必要だ」と考えるようになりました。泥や砂にまみれて、からだいっぱいに遊びまわる子どもたちのイキイキとした表情をみて、「子どもが集中して遊べる環境をつくることが私の使命だ」と感じたんです。そこからは一気に動きましたね。
とはいえ、当初の園庭づくり提案した時、園内でも賛成と反対で大きく意見が割れましたし、当然、保護者の方からも厳しい意見をいただくこともありました。
それでも私は、子どもたちが遊びに真剣になれる園庭づくりの大切さを、職員や保護者の方に何度も粘り強く説明しました。そして、ようやく少数の賛同者を得て、園庭整備に着手することができたんです。
かなり大変な作業でしたが、生まれ変わった園庭で子どもたちが遊びまわる姿をみて、俄然やる気が湧いてきました。園庭で遊ぶ子どもたちの表情が、今まで見たこともないくらいイキイキしていたんです。
ふたば幼稚園の園庭づくりのこだわり
子どもの自主性と好奇心を育む園庭を実現するために、私たちがどんなところにこだわっているのかをご紹介します。
①裸足で走り回れる「砂」を厳選
当初、園庭には海砂・川砂・山砂の3種類を使用していましたが、子どもの遊ぶ様子を観察し、海砂を使用することに決めました。
海砂は通常サラサラしていますが、水を加えると固まるので、創意工夫次第でグンと遊び方が広がります。
どんな遊びができるかを自分で考えたり、仲間に提案したり、相談したりできるわけです。子どものコミュニケーション能力がとても豊かになりますよね。
ちなみに園庭づくりの際に、グラウンドの土も総入れ替えしています。この土も、裸足で走っても痛くないやわらかい土を厳選しました。
②30本もの「花木」を園庭に植栽
自然がより身近に感じられるように、木の実やどんぐり、ブルーベリーをはじめとする30本を超える花木を園庭に植栽しています。
見て、嗅いで、触って、持って、くらべて……「なに?」「なぜ?」「どうして?」と好奇心をくすぐられた子どもたちは、五感をフルにはたらかせて一生懸命に頭を使います。その探求活動が子どもの情操を豊かにしてくれるのです。
③子どもの反応を観察して何度もつくり直す「遊びこむ」遊具
園庭にある遊具は、専門アドバイザー「井上寿」先生の指導のもと、組み立てや材料切りから全て職員の手づくりです。園庭の遊具は、職員や保護者の方と共に、コツコツつくり続けてきました。
園庭づくりのコンセプトは以下の5つです。
- 子ども達が主体的に遊べる環境
- 子どもが自ら選べる環境
- 子どもが試行錯誤できる環境
- 子どもが落ち着ける環境
- 子どもが挑戦できる環境
毎日子どもたちが元気に遊んでくれますので、遊具の点検は万全を期しており、なにかあればすぐに修繕できるように材料を常に用意しています。
おかげさまで、現在の園庭には、子どもたちが全力で遊べる素敵な遊具でいっぱいです。つくったらそれで終わりではなく、子どもたちが実際に遊んでいる様子を注意深く観察しながら、壊してはつくり直すことを繰り返し、「より深く遊びこめる遊具」を生み出しています。
園庭は動きのある遊びだけが中心ではありません。ベンチに腰かけて自分のペースで休みながら遊べるスペースや、職員とおしゃべりを楽しむ焚き火コーナーも用意しています。
④園庭の専門家によるアドバイスで安全な設計
「子どもが遊ぶ遊具を手づくりするのは危ないのでは?」と疑問に思われる方もいるかと思いますが、ご安心ください。当園の園庭づくりは、一級建築士/こども環境アドバイザーである井上寿という方からアドバイスを受け、実際に園庭づくりに携わってもらっています。プロの視点で設計した遊具と動線ですから、子どもはのびのびと走り回ることができます。
また当然ですが、安全管理にも力を入れています。万が一、子どもが怪我した場合に瞬時に対応できるよう、職員は全員国際資格MFAの資格を取得しています。応急救護レベルの技術を身に着け、緊急時に対応をできる体制を整えています。
園庭づくりを通して変わったこと
園庭づくりは、子ども・職員・保護者の方に大きな変化をもたらしました。
子どもの変化①楽しさを自分で見つける“遊び名人”になった
園庭ができてからというもの、子どもたちは遊びに真剣になり、集中して遊びこむようになりました。園庭にはいろんな遊びスポットがあるので、園庭にでると、子どもたちは真っ先に自分が遊びたいスポットへと走り出します。園庭づくりにこだわる前よりも、子どもたちの「これがしたい!」という意思決定が明確になりましたね。
園庭にまだ何もない頃は、たとえばブランコの順番待ちをしている子たちは、遊びを見つけられずにフラフラしたり、遊びを見つけたかと思いきや長続きしなかったりしていました。
現在では、そうした“遊び迷子”はほとんどいません。みんな、自分で楽しいことを見つけることができる遊び名人です。いまでは、「子どもがあまりにも遊びこむので家に帰りたがらなくて困る」という保護者の声もあるくらいです。
子どもの変化②子どもがのびのびと能力を発揮するようになった
またその他にも、いろんなことに積極的に挑戦するこどもが増えましたね。「これで遊ぶのはちょっとコツがいるかも」というタイプの遊具でも、子どもたちはいとも簡単に遊び方をものにしてしまうんですよ。あらためて、子どもっていうのは、大人が考えている以上にチャレンジ精神があって、能力が高いのだなと感心します。
ようするに、今までは子どもが能力を発揮できる環境を提供できなかっただけなんです。“遊びこむ”をテーマにしたこの園庭は、子どものチャレンジ精神を養ったり、課題解決能力を育てたりするのに最高の環境といえます。
子どもの変化③年齢をこえてコミュニケーションがとれるようになった
園庭で過ごす時間では、学年に関係なくみんなが遊び仲間です。子どもたちが臆することなく異年齢の子とコミュニケーションをとるようになったのも、大きな変化ですね。難しいことは年長さんが教え、年齢が低い子は上の子の遊びをみて学ぶ。園庭では、そんな子どもたちの姿が当たり前の光景になりました。先生がいなくても、「教える」「教えてもらう」関係性が自然に芽生え、遊びの伝承が行われるようになりました。
保護者の変化
園庭整備の初期の頃は、一部の保護者の方から「安全性は大丈夫か」と懸念・反対する方もいました。お便りや説明会を通して何度もご説明いただき、最終的には土山づくりを手伝ってもらえるようにもなりました。
園庭が完成すると、保護者の方にも実際に遊んでもらうこともあります。そして、大人でも「怖い」と言ってできなかったことが、子どもはへっちゃらなんてこともしばしばあります。
このようにして、保護者の方が実際に遊具を体感することで、子どもの能力の高さを認識してもらえるという点でも、園庭づくりは本当に意義があるなと思うのです。
職員の変化
園庭づくりを進めていくと、どんどん作業に参加する職員が増えていきました。いまでは、園庭づくりを通じて、子どもたちがどんな風に変わっていくのかに興味関心をもち、「もっと子どものことを学びたい」と意欲的に研修会に参加してくれるようになりました。おかげさまで、職員のレベルが全体的に高まっています。
ふたば幼稚園はこれからも遊びの環境づくりに取り組んでまいります!
現在は、園庭に限らず、室内環境においても「遊びこむことのできる環境づくり」に取り組んでいます。今後は、雨や雪の日でも身体と頭を使って全力で遊ぶことができます。
まとめ
今回は、ふたば幼稚園の園庭のこだわりを園長山中に語ってもらいました。
この記事を通して、私たちの園内の活動を知っていただければ幸いです。
園庭に関すること、幼稚園見学のお問い合わせは下記よりお願いいたします。
幼稚園見学予約TEL:0166-33-6608(9:00-18:00)
旭川ふたば幼稚園
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